一年前の誕生日は一番寂しかった。
みんなも初めに就職して、忍足も卒業準備に追われ、忙しそうだった。
まぁ誕生日でも何か特別な日じゃねぇ、一人で過ごせるのもいいんだ。
と思ったら、平気で一日は出来だ。

でも、やぱり一人で誕生日の夜は長かった。仕事は終えて部屋に戻ると、少し退屈していたんだ。
ビールだけ飲まければいいと思ったが、あの気持ちはもうなくなってしまった。
その時、不意に一人の訪客は来た。

跡部だ。

幼馴染は相変わらず勝手で「お前と飲み」と言ったけど、友人の顔を見たら嬉しかった。

「誕生日でも一人で、お前はかわいそうじゃねぇか。」
「うるせえ。」

鼻先で笑った彼に、俺は睨みつけて乱暴な言葉で応えた。
でも、苦しい、どんな不快な感情は空気を伝った。

そして

「なんかあったのか、お前の犬ちゃんと」
「え？」
「鳳だ」

ズキリ、と心臓が軋んだ。
その名前をはっきりと口にすると、ぴくりと身を揺らした。

俺はなんでも言わず、自分の手元を見つめた。

「おい、どうした？」
「……」

断片的な声が耳に届く、冷静な態度を出来ねぇ。

なんだよ、それは。
胸の奥に痛む、苦しい、痛い、痛くて、苦しい。まるで自分の体の一部を削除されたように、痛すぎて堪えきれなかった。
嫌だ。

「おい、宍戸、どうした？」
「……」
「おい！」

「俺は、長太郎に会いたい」

一言放って、部屋は真っ静かなった。

素直に言えば、初めだ。
俺は今、素直なりたい……のか

それでも
それでも
それ以上は……
両手で顔を覆って、必死に笑っていた。


「宍戸……泣くな」

ただの一つの言葉が言って、跡部は黙っていた。